マギと謳われる彼は語る、

彼の生来の在り方が、
彼が彼であるゆえに、
世界は一度様相を変えるのだと
…彼が彼であることを、いつかこんなにどうしても、きっと感謝をするのだろう









ファナリスの彼女は語る、

優しくはない現実は、酷なだけではないと
一歩を大きく踏み出せる脚はそれだけで
どんな壁もどんな敵も越えていける力を、
大切な人のために力を、私は、









立場の違う皇子は語る、

彼との違いは、
彼との違いは、
彼との違いは、
彼岸とも思える場所に立ち竦むだけでは、ただ単純に笑うことすら難しいのだと
彼の差し出される手の先を、何故こうも望んでしまいたくなるのか









紫黒の王は語る、

幼い少年は色濃く姿を変えて、いつか再び目前に立つのか
その瀬に臨む時、果たして流転は訪れるのか
知らなければ分からない物々の中で行く末の幸福を願えるほど、いっそ無知であれれば彼のようにあれたのか









銀灰の政務官は語る、

陽光に映える金糸は何処へ向かうのか
囁ける愛情と重ねる愛除は言葉に出来ぬ程
…せめての未来を紡ぐ心を
どうか、
どうか、









白髪の師は語る、

組んだ肩は薄くも無いが厚くも無く
支えた体は小さくも無いが大きくも無く
ただの一言、見上げてくるその表情一つ、明るいものであるならそれで…それだけで









彼の親友は語る、

前世でも来世でもなく、語られるべきは今であって
どうしてだとか何故だとか、色々考えるその前に
こんな感情を抱けることを、それでもこうしていられることを、…総ては繋がっていくのだ
今度こそもう、間違わないよう











彼自身は語る、

片鱗を見た
片鱗を聞いた
多くを知り
少なくない歩みを重ねた
その数知れない数々の度に、誰かがいたのだと
ふっと上がる口角の末端に、誰かがいるのだと
世界のどこでも、そう、












蜂蜜色に恋をする

(どうか彼彼女らの世界が優しいものでありますよう)
(笑える世界に一滴の、愛)